LINEヤフーコミュニケーションズでは、「移動のDX」としてこれまでLINEを活用し、地方交通の課題解決に取り組んできました。
そしてこの度、2024年11月、当社がネクスト・モビリティ社と協働施策として行っているAIオンデマンドバス「のるーと」LINEミニアプリが、高齢者にも親しまれるLINEを活用し、乗り忘れ防止通知など多彩な機能の点が評価され、2024年度グッドデザイン賞を受賞しました。
プレスリリース:AIオンデマンドバス「のるーと」LINEミニアプリ、2024年度グッドデザイン賞受賞
「のるーと」LINEミニアプリとは?
「のるーと」は、利用者の予約に応じて効率的に乗り合いが可能なルートを、人工知能(AI)が自動で設定するオンデマンドバスです。西日本鉄道株式会社も出資しているネクスト・モビリティ社が全国の自治体や交通事業者にサービス展開しています。2023年2月に、福岡県宇美町で運行を開始した「のるーと宇美」で初めてLINEミニアプリを活用した予約サービスを開始しました。
※LINEミニアプリは、ライフスタイルのさまざまなニーズに応えるサービスを、LINE上で提供できるウェブアプリケーションです。LINE上で利用できるLINEミニアプリでは、追加のアプリダウンロードや煩雑な会員登録が不要です。
LINEミニアプリによる予約サービスが始動した2023年2月以降、全国20以上のエリアで導入されるサービスとなった「のるーと」(※2024年11月取材時)。なぜ全国の自治体でサービスが導入され、高齢者の方を中心に多く利用されているのか、今回の受賞に合わせて、改めて「のるーと」LINEミニアプリについて、ネクスト・モビリティ社の担当者の方々にお話を伺いました。
橋場さん:2020年頃にLINEヤフーコミュニケーションズさんから『LINEで「のるーと」の乗車予約ができるようにしませんか?』とご提案はあったのですが、実は一度お断りをしていたんです。当時は「のるーと」のネイティブアプリの周知を高めたいと考えており、「のるーと」の導入地区も福岡県のアイランドシティと壱岐南エリアのみで、まずは「のるーと」サービス自体の導入先を広げていくことが先決という状況でした。
ただ、その後も横尾さんとは連絡を取り続けていました。お断りしてから約1年後に導入エリアが増えた段階で、ネイティブアプリだけだと「のるーと」のメインユーザーである高齢者の利用促進にハードルがあるとわかったんです。高齢者の方の利用も多いLINEを基盤としたアプリであれば使ってもらいやすいのではないかと考え、本格的に導入に向けて動きはじめました。
横尾:「のるーと」をLINEから乗車予約ができれば、誰もが使いやすいサービスになるはずだと思っていたので、1年越しに一緒にやろうと連絡いただけたのはうれしかったですね!
― 今回、グッドデザイン賞受賞の評価コメントに「利用者のことを第一に考えたデジタル化に好感を持った。」とありましたが、サービス導入時にこだわったポイントなどありますか?
橋場さん:UI・UXに一番こだわりを持ちました。
ネイティブアプリも使いにくいわけではないのですが、認証コードを送らないといけなかったり、メールアドレスの登録が必要だったりと、情報を文字で打たないといけないこともあり、登録までのハードルが少し高く離脱も少なからず発生していました。
電話予約を選ぶ方が多いと、電話対応で自治体側にも負担になります。
LINEミニアプリでの予約では、利用者にとって直感的に使いやすい設計を目指し、認証コードが必要なく、ユーザーがプロフィール情報連携の許可ボタンを押せばすぐにサービスが使えるようにしました。
あとは、業界用語を使わない、雰囲気を柔らかくするためにひらがな表記を多めに、色も淡い色を使用する、文字サイズの配慮など細部まで工夫を凝らしました。
横尾:たしかに。漢字が多いよりも、ひらがなが多い方が、角がとれて柔らかい印象になりますね。
橋場さん:私たちが当たり前に使っていた単語も実は業界用語だった、なんてこともあったので、LINEヤフーコミュニケーションズさんなど外部の方の意見を参考にしながら設計しました。
横尾:UI・UXに関しては、LINEヤフー社のMaaS担当者からも高評価で、「LINE API Use Case」というLINE APIの活用事例を紹介するサイトでも好事例として取り上げてもらえました。
野村さん:すでに導入している福岡県宗像市や長野県塩尻市への移住を決めた方の中に、『「のるーと」があったから』といってくださる方もいたんですよ。
また、乗車の通知が予約したLINEに届くので高齢者だけでなく、夏休みの塾利用などでお子さんの見守りとしても利用していただいています。LINEミニアプリを含め、自分たちのUI・UXへの工夫やこだわりが高齢者、若年層など幅広い世代の利用にもつながっていると実感し、うれしいです。
古屋さん:そもそもLINEミニアプリ化を進めるにあたり、サービスの改善や自治体の要望に迅速に応えられるよう、改良のしやすい柔軟な仕様で設計することを第一に考えていました。そのうえで、今回併走してくれた開発会社さん(株式会社ルートコミュニケーションズ)との相性もよく、我々の要望をくんだ設計にしてくださったことも大きかったと思います。
ネイティブアプリはAppleなどの審査プロセスを経る必要がある一方で、LINEミニアプリだと審査の必要がないので、迅速に変更対応が可能でした。この速さがユーザーだけでなく導入自治体との信頼関係にもつながっていくと感じます。
― 実際に導入した自治体やユーザーからの反応はいかがですか?
橋場さん:「のるーと」LINEミニアプリを導入している自治体に対しては、ユーザー向けにLINEからの予約方法を中心とした説明会を実施しているところもあります。また、導入自治体のLINE公式アカウントに「のるーと」の予約サービスが紐づいているケースも多いので、住民の方にとっても安心感があって使いやすいのではと感じています。
LINEヤフーコミュニケーションズの皆さん、ルートコミュニケーションズの皆さんと実際に現地視察するなど、伴走してくれたのもサービスの成長に大きく関わっていると感じます。
横尾:ありがとうございます。私たちも宇美町への導入の際は、一緒に現地に行ってユーザー視点でどこを改善したら誰でも使いやすくなるかなど検証させていただいたのに加え、サービスリリースの当日には、住民向けLINE予約体験会に弊社社員も講師役として参加させていただきました。直接ユーザーの方と接する機会が少ないので、実際に生の感想も聞けてよかったです。
古屋さん:それでいうと私も自分の中での感動エピソードがあって。
宇美町での体験会をした当初は生年月日の入力は西暦になっていたんですが、実際に体験会に参加されていた高齢者と話すと、和暦で入力しようとする方が多かったんですよね。その話をルートコミュニケーションズさんにお伝えしたら、翌営業日には西暦の横に和暦表記も加えてくれたんです。とても細かい部分ではあるのですが、やはり利用者に合わせた使いやすさを探求するうえで大切なんだと実感したできごとでした。
橋場さん:LINEミニアプリを使って予約できるサービスは他にもたくさんあると思いますが、きちんとユーザーが使いにくいと感じるポイントを理解し、解決できることが我々の強みだと思っています。
これまでは自分たちで自画自賛していましたが、導入した自治体からも高評価をいただき、今回グッドデザイン賞もいただけたことで、きちんと自他ともに認められるサービスになったと自信になりました。
LINEミニアプリによる予約開始から1ヶ月後に行われた住民アンケートでは、「かんたん」と答えた人が59%で、「むずかしい」と答えた人の13%を大きく上回りました。
今回の協働施策によって、ユーザーにとってより使いやすいサービスになったことが伺えます。
これからも「のるーと」LINEミニアプリを通じて、地域社会の移動手段の革新に貢献していきます。地方交通の課題解決に向けた新たな挑戦を続け、より多くの人々に快適で便利な移動体験を届けることを目指していきます。
GOOD DESIGN AWARD 受賞会場の様子