LINEヤフーコミュニケーションズと西日本鉄道が2021年に締結した「LINEを活用した西鉄グループのDX推進に関する連携協定」は今年で5周年を迎えます。
この5年で生まれた企画は20以上。3月から始まる有料座席列車「Nライナー」でも、LINEでチケット購入から通知まで完結できる仕組みを整えるなど、2社の取り組みは広がり続けています。
そこで、協定締結5周年を記念し、2026年3月16日から天神大牟田線でLINE FRIENDSのオリジナルデザインを施したラッピング電車の運行を開始します。あわせて、オリジナルデザインnimocaも数量限定で販売します。
この5年間で生まれた、福岡の暮らしに寄り添うLINEを使った「ちょっと便利な体験」を改めて知ってもらうきっかけにしたい――。そのために、両社の福岡への愛や、これまでの取り組みへの思いをベースに、目に留まる可愛いデザインから心に残るコピーまで、細部にこだわって組み立てました。見れば見るほど発見があるように設計しています。
今回は、そんな制作の裏側を、中心となって企画を進めた依田さん(LINEヤフーコミュニケーションズ)と西村さん(西日本鉄道)に伺いました。
――今回のラッピング電車は、どんな背景で生まれたんですか?
依田:福岡のインフラを支える西鉄さんと、福岡に本社を置く私たちが、福岡の生活をより豊かにし、日本トップクラスのスマートシティを目指そうと協定を結んでから、今年2月で5周年を迎えました。協定をきっかけに、LINE公式アカウントを通じた情報発信に加え、交通サービスや商業施設との連携など、西鉄グループ内で約20の施策を展開してきました。昨年はそれらの取り組みが評価され、2025年度グッドデザイン賞を受賞できました。
連携協定から5周年の節目を迎えるにあたり、「これからさらに強く連携していくためのキックオフにしたい」という想いから、周年企画を検討し始めました。
西村:3月から有料座席列車「Nライナー」が始まることもあり、「せっかくだから特別な車両にしたい」という思いがありました。電車は日常的に多くの方が利用しますし、街に届く形としても相性がいいと感じました。
依田:毎日見かける電車だからこそ、見るたびに新しい発見があって、少しずつ私たちのメッセージが伝わっていく――そんな存在になればと思っています。さらに、手元に残る形としてオリジナルnimocaも制作しました。
西村:電車やnimocaを日常の中で使うたびに、この取り組みを思い出してもらえたら嬉しいですね。
――LINE FRIENDSの電車可愛いですね!オリジナルデザインですか?
依田:はい。今回のラッピング電車は、すべて新規描き下ろしのオリジナルのデザインです!実は最初から描き下ろしが決まっていたわけではなく、LINE FRIENDSを使って新たに描く場合は「なぜ描き下ろしが必要なのか」をきちんと説明する必要があります。
そこで、取り組みの背景や「福岡らしさ」をデザインに落とし込みたいという思いを丁寧に伝えた結果、5車両すべての描き下ろしがが実現しました。
――入口として「目に留まる」デザインは、どんな方向性で考えたんですか?
依田:この電車のいちばんの見どころは、福岡の街並みを舞台にLINE FRIENDSと西鉄グループのサービスが同じ風景の中に自然に共存しているところです。中でも番象徴的なのが、ブラウンとサリーが西鉄バス・電車の制服を着ていること。実際の制服を参考に、袖の線の数やボタンまで、できるだけ忠実に描きました。袖の線が階級を表すと伺って、そこも意識しています。
西村:最初にデザイン案を見たとき、細部の作り込みに驚きました。袖の線一本にも意味があることを、きちんと表現していただいています。
ブラウンとサリーは駅長を目指して、「乗務員」からのスタートです(笑)。
――背景の描き込みも、かなり細かいですよね。
西村:福岡の街並みを忠実に反映しているのもポイントです。日常的に西鉄を使っている方なら、「家の近くのあれじゃん」と思ってもらえるといいですね。
この5年で生まれた取り組みを象徴するサイクルトレイン、にしてつストア、AIオンデマンドバス「のるーと」、マリンワールド海の中道なども描いています。さらに、西鉄のバスや電車で行ける場所を意識して、ONE FUKUOKA BLDG. 、西鉄福岡(天神)駅周辺のイメージ、太宰府や大牟田にある建物、柳川のスポットを観光するLINE FRIENDSの仲間たちも織りみました。LINE FRIENDSの仲間たちが買い物したり移動したりする「福岡の日常」の中に、両社が連携してきたサービスや取り組みの舞台となるスポットも散りばめています。
依田:数字や実績を並べることもできますが、それよりも「あ、いつも使っているあの場所だ」と気づいてもらえることを大切にしました。乗った人が街の中で自然と「答え合わせ」できるような仕掛けにしています。
――細部にまでこだわっているのですね!デザインにもすごく福岡愛を感じます!
依田:福岡といえば屋台ですよね。今回のデザインにも屋台のシーンを入れているのですが、私は屋台のプロジェクトも担当していたので、個人的にも思い入れが強い部分なんです。
観光の象徴として描くのではなく、「福岡の日常の風景」として表現したいと思ったんです。地元の人がふらっと立ち寄る、あの距離感や空気感を大事にしました。
中でもお気に入りなのが、背中を向けてラーメンを食べているレナードです。あの構図は、今回のための描き下ろしだからこそ実現できた表現で、「ここでしか見られない」ポイントだと思っています。
西村:私は、西鉄のサービスが「ちゃんとリアルに描かれていること」にこだわりました。
マリンワールド、AIオンデマンドバス「のるーと」、西鉄バスなど、実際のサービスや施設がモチーフになっていますが、実物のロゴやカラーのルールに沿うよう、細かく確認しています。
それから、福岡市内だけで完結させないことも意識しました。
天神周辺だけでなく、日常的に電車を利用してくださっている太宰府、柳川、大牟田といったエリアのスポットも入れたいと強く思っていました。沿線全体で支えていただいているからこその5周年なので、そこは外せないポイントでした。
依田:にしてつストアの入れ方も、実は結構議論しましたよね。
西村:そうですね。最初は建物として描く案もあったのですが、それだと少し説明的になる気がして。
依田:それなら、ショッピングバッグをキャラクターに持たせた方が「日常」として自然で面白いのでは、という話になりました。
西村:結果的に、買い物帰りのムーンというシーンになって、より生活に溶け込んだ表現になったと思います。実際の店舗で使われているショッピングバッグそのままではないのですが、にしてつストアからOKをいただき、今回のために特別に使用しています。
それから、実は久留米の花火大会も入れられないか、なんてアイデアも出ました。デザイナーの方にも相談してみたのですが、今回のイラストは日中の設定なので、「この世界観の中で花火はさすがにおかしいか」となって(笑)。最終的には断念しました。
でも、そうやって一つひとつ本気で検討しながら、細部まで詰めていきました。
――見た人に、どう楽しんでほしいですか?
依田:描かれている場所を、ぜひ全部見つけてみてほしいです。細部までこだわって見どころをたくさん散りばめています。写真もたくさん撮ってほしいですね。ドアが閉まったときに見える仕掛けもあって、見れば見るほど発見があるようにしています。
――コピー「『福岡っていいな』を、もっと。」は、どう決まったんですか?
依田:ちょうどLINEヤフーコミュニケーションズとして、自治体や企業との共創を通じて地域課題を解決するスマートシティ事業「LINE SMART CITY」の取り組みを、もっと広く知ってもらうための新たな事業コンセプトを考えていました。その中で出てきた言葉が、「『福岡っていいな』を、もっと。」です。西鉄さんと一緒にこれまで取り組んできたことも、福岡の日常の中の「ちょっと便利」「ちょっと助かる」を増やすことにつながっている。このコンセプトの方向性にも合っていると思って、「これをテーマにしませんか」とご提案しました。
西村:すごく素敵なコピーですよね。福岡にお住まいの方にも、福岡に訪れる方にも共感してもらえる内容になっていると思いましたし、私たちの想いにも重なるところがあって、とても共感しました。
――オリジナルnimocaも作ることにした理由は?
依田:nimocaは一番手元に残るものだからです。電車の外観は「可愛い」が入口になりやすい一方で、手元に残るnimocaは、取り組み自体をしっかり届けられる「深掘りの場所」になる。だから作ろう、となりました。
――nimocaで意識したことは何でしょう?
依田:もう一段深く、「こんなにちゃんと企画が生まれているんだ」と感じてもらいたかった。事例の紹介要素も入れて、手元で見返したときに中身までたどり着けるように意識しました。
西村:最初は「nimocaにLINE FRIENDSの仲間たちが載るのっていいのかな/できるのかな」と思う気持ちもありました。でも実現できて、お客さまに持っていただけるのはうれしいですね。5年間の積み重ねがあったからこそだと感じます。
今回、ラッピング電車とオリジナルnimocaを含む制作物全体のクリエイティブを統括した、クリエイティブディレクターの佐藤さん(LINEヤフーコミュニケーションズ)にも、世界観設計のこだわりを伺いました。
何度もすり合わせを重ね、細部までデザインを磨き込みました
――西村さんは入社2年目、依田さんは入社3年目。5周年という節目の企画を担当して、振り返るとどう感じましたか?
西村:最初は「私がやるんだ」という実感があまりなかったんですが、だんだん実感してきたときにプレッシャーはありました。5年間の会社と会社の取り組みを、実際にお客さまに届く形で伝えていく仕事なので、責任は重いなと。
ただ、普段の業務の中でこうしたPRの仕事は多くないので、自分にとって新しい挑戦でもありました。素直にうれしかったですし、頑張ろうと思いました。
依田:私も、プロジェクトが進むにつれて、実感が湧くと同時に思い入れもどんどん強くなっていきました。日常的にも西鉄を使うことが多いので、今回のラッピング電車が「自分の生活にどう溶け込むか」「身近な人がどう感じるか」を考えるのが楽しかったです。
実際に何度も駅に足を運んで、電車がホームに入ってくる様子を見ながら、「どんなデザインなら見やすいか」「どうしたらワクワクしてもらえるか」を何度も想像しました。媒体としても大きく、長い期間走るので、細部まで突き詰めてこだわろうと時間をかけました。
――若手だからこそ出せた視点や、工夫できたことはありましたか?
依田:お互い同世代だからこそ、打ち合わせの序盤から結構自由にアイデアを出せました。今回のラッピング電車は、「写真を撮りたくなるかどうか」もポイントだと思っていました。SNS利用が身近な私たちの年代の感覚として想像しやすいので、そういう目線は若手として出しやすかった視点だと思います。
――一方で、進める中で大変だったことは?
西村:関係者への確認ですね。社内だけでなく、デザインで描き出した建物やサービスの関係者が多い企画なので、ビジュアルやコピーなど、その都度調整しながら進めました。
一つ決まったと思ったら次の調整が出てくる——その積み重ねが大変でしたね。
――次の5年に向けて、どんな挑戦をしていきたいですか?
西村:これまでの5年は、一つひとつのサービスという「点」を積み重ねてきた時間でした。これからの5年は、それらをどうつなぎ、「線」にしていくかがテーマになると思っています。
西鉄グループには交通だけでなく、商業やレジャーなどさまざまな事業があります。そこにLINEをはじめとするデジタルの力を掛け合わせることで、移動から買い物、体験までが自然につながる世界を実現していきたい。便利さやお得さだけでなく、もっと豊かな体験をお客さまに届けられる取り組みをしていきたいです。
依田:そのビジョンを、具体的な体験として形にしていく役割を担えたらと思っています。
たとえば、LINEで届いた情報をきっかけに実際に電車に乗ったり、お店に立ち寄ったり。サービスの中で完結するのではなく、西鉄さんのさまざまなサービスが自然につながっていく仕組みを、一緒につくっていきたいですね。
可愛さの先にある「ちょっと便利な体験」を、街の風景の中で。ラッピング電車をきっかけに、両社の取り組みが福岡の日常に溶け込み、次の共創につながっていく――そんな未来に向けて取り組んでいきます。