来週からいよいよ新年度。
異動や採用、ジョブチェンジなどで心機一転、新たなチャレンジをはじめる組織も多いのではないでしょうか。
LINEヤフーコミュニケーションズも、新年度の「キックオフ」や、ひとりひとりのスキルや経験を最大限に活かして成果を上げるチームをつくろうという「ビルディング」など、組織内のコミュニケーション施策があちこちで企画されはじめる時期です。
オフサイトミーティング、研修、ゲーム等、各組織が趣向を凝らすのですが、中でもユニークな施策を継続的に実施しているのがグローバルコンテンツ部。
LINEおよびLINE関連サービスの「翻訳」と「運営サポート」を担当するこの部署で、サービス翻訳者として活動しながら、部の課題解決をミッションとするチームでも活躍する デラフエンテ・ファンさんに、昨年度大好評だったアイディアと活動にかける思いについて聞きました。
プロフィール
デラフエンテ・ファン Juan Delafuente、通称ファンペルー出身の日系人で接客業界を経て2013年に入社。IT業界での翻訳業務を通じて人々をつなぐ架け橋として活躍。ラテン文化への深い愛とグローバルな視点は、社内の多文化コミュニティを豊かにする役割を果たしている。趣味のロードバイクでは、「Vamos!(イケー!)」の元気な声と共に、週末の自由を全身で感じ、新たな挑戦へのエネルギーを蓄えている。
サイクリング中のファンさん。映画の1シーンではありません。
― 最近では、忘年会がすごかったと聞いています。
ファン:「ワンランク上の忘年会」をめざして、会の中で、NFCタグ(※)、生成AI、LINEの公式アカウントを活用したコミュニケーションを提供しました。
※近距離無線通信を利用した小さなチップ。スマートフォンなどのデバイスをかざすだけで情報の読み取りや交換ができ、決済や情報共有などに活用される。
― 忘年会で NFCタグに生成AI?
ファン:
たとえばメインの企画では、「未来型名刺交換」の仕組みをつくったんです。
まず、私たち企画チームで、メンバー一人ひとりから趣味や好みなどのキーワードと好きな画像を収集しました。これらの情報を、このイベント用に開設した部署専用のLINE公式アカウント(LINE VOOM)に投稿すると、各投稿には独自のURLが生成されます。このURLをNFCタグに組み込んで、NFCタグが埋め込まれた名刺を全員分準備したんです。
スマートフォンをかざして名刺を読み込むことで、事前に登録したメンバーの情報を閲覧できる仕組みです。
忘年会では、同じテーブルに座った人同士、名刺のNFCタグを読み取り合って雑談してもらいました。
普段話したことがない人同士でも、キーワードや画像が話のきっかけとなって大盛りあがりでした!
写真右:名刺に仕込んだNFCタグを読み込むと参加者の情報が表示される
― グローバルコンテンツ部がコミュニケーション施策に力をいれる理由を教えてください。
ファン:
この部は、「サービス翻訳」と「運営サポート」、それぞれ別の機能をもつ2つの組織の統合で2022年に誕生しました。
当初は翻訳は翻訳、運営は運営、という編成だったんですが、2023年、連携の緊密化や効率化のために、ひとつのチーム内で翻訳も運営も行うかたちに再編されました。機能別だった組織を、サービス軸で混ぜるチャレンジをしたんですね。
コロナ禍の影響でリモートワークが定着したこともあって、いまのグローバルコンテンツ部にとって部内のコミュニケーションは、とにかく重要なんです。
定期的なALL-HANDS(※)等のイベントを通じて、部員間のコミュニケーションを活性化し、新しいシナジーを生み出す取り組みに力をいれています。繁忙期以外はほぼ毎月実施しているんですよ。
※会社が定期的に開催している全社員参加型ミーティングのこと
互いの業務やスキル、視点を理解し、人となりを知る場所としてALL-HANDSを開催
ALL-HANDSの合間に流してたちょっとシュールなストレッチ動画。随所にコミュニケーションを生む仕掛けがいっぱい!
ファン:
コミュニケーション施策に力をいれる理由はもうひとつあります。
もっと大きな、少し高い視座からの目的感と言えるかもしれません。
私たちの会社はLINE Fukuokaとヤフーのカスタマーサポート部門が統合して、2023年10月、LINEヤフーコミュニケーションズとしてスタートしたばかりです。
まったく別の組織が一つになるわけですから、シナジーを生むためには、双方のコミュニケーションを強化していく必要があります。
違うカルチャーをもつ組織同士が、コミュニケーションをとっていくにはどうしたらいいか、翻訳と運営サポートの統合で私たちが試行錯誤しているのと同様、社内の他部門が悩むこともあるでしょう。
グローバルコンテンツ部が獲得してきたナレッジを、他の部署でも活かしてもらえたらという気持ちですね。
マイクロな実験をしているんです、と話すファンさん。
― 忘年会の企画の中には、翻訳者としての思いを込めたものもあったそうですね
ファン:
はい、生成AIとLINE公式アカウントの「カードタイプメッセージ機能」を使ってつくった3択クイズ、「グローバルことわざOh(王)!」のことですね。
各国のことわざを直訳した日本語を出題し、真の意味を当てるゲームで 問題を考える際に生成AIを使っています。LINEヤフーグループは生成AIの社内活用を推進していますから、できるだけ使うようにしています。
百聞は一見にしかず、この問題を解いてみてください。
問題:
これは生成AIが訳した韓国のことわざです。どういう意味でしょう?A〜Cの3択から正しい意味を答えなさい。
「冷めた粥を食べる」
A:対応が遅いこと
B:すごく簡単なこと
C:一人取り残されること
「グローバルことわざOh!」の「Oh!」は「王」と「びっくり」をかけているそう。
― 難しい。冷めたお粥を食べるのは、なんだか寂しそうだからCですか?
ファン:
残念、正解はBの「すごく簡単なこと」でした。
韓国のことわざの「식은 죽 먹기」を直訳した問題です。難しいですよね。
スペイン語の翻訳も担当する私としては、生成AIが会社にとって有用なツールである一方で、「翻訳はAIに任せたら充分」という空気感がある気もしていて、少し危機感を覚えています。
クイズを通して「直訳するだけでは、言葉の本意が伝わる表現にならないよね。翻訳はそんなに単純じゃなくて、正しく意味を伝えるために必要な仕事なんだよ。」というメッセージも伝わったらいいなって。
運営と翻訳の得意なところを組み合わせたコンテンツになりました。
― これらの取り組みをしてきて、部には何か変化や影響はありましたか?
ファン:イベントの事後アンケートで嬉しいコメントが増えてきたこと、顔見知りが増えて温かい雰囲気になってきたことでしょうか。
グローバルコンテンツ部には、私も所属する「GCクロスファンクション」というチームがありまして、部内の課題を解決し、横断的に活動を推進する役割を担っています。部内イベントを催す上で、最初は私たちのチームがアクションを起こしていました。
忘年会を境にグッと距離が縮まったこともあってか、各パート・各チームでワークショップを持ち回りする動きがでてきています。自然にコミュニケーションが発生する仕組みにしていければと考えています。
― 今後の展望を教えてください。
ファン:私は世界をつなぐ翻訳の力を信じています。
多様な文化の橋渡し役として、言語の壁を越えることがサービス翻訳の使命です。
オペレーションでは各プロセスをスマートに進化させ、新しいアイディアで価値を生み出し続けます。
これを実現できるグローバルコンテンツ部をつくるために、コミュニケーション施策も頑張っていきますよ。
もちろん24年度の開催分についても、すでにいろいろ考えてることがあるんです(笑)