2026年2月25日、株式会社ベリサーブと株式会社MagicPodが主催するオンラインセミナー「テスト自動化とQAの事業貢献~3社で語る攻めの品質創造とは~」が開催されました。
LINEヤフーコミュニケーションズのサービステスト本部からは野原・広瀬が登壇。株式会社MagicPodの伊藤さん、株式会社ベリサーブの長橋さんとともに、生成AI時代におけるQAの事業貢献やテスト自動化の価値について議論しました。
● 開催日:2026年2月25日
● 形式:オンライン
● 主催:株式会社ベリサーブ、株式会社MagicPod
● 登壇:LINEヤフーコミュニケーションズ(野原・広瀬)、株式会社MagicPod(伊藤さん)、株式会社ベリサーブ(長橋さん)
生成AIによって開発が加速するほど、テストがボトルネックになり得ます。冒頭では「QAは何で事業に貢献するのか」がクオリティ・コスト・納品スピードの観点で整理されました。
司会:まず、皆さんが考える「事業貢献するQA」の定義を伺えればと思います。QAやテストは一般的には守りの活動のように捉えられがちですが、事業貢献するQAとはどういうものなのか。それぞれお聞きしたいです。まず野原さん、いかがでしょうか。
▲LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 サービステスト本部 野原優己
野原:いろいろ切り口はあると思うんですけれども、我々としてはクオリティ・コスト・納品スピードのバランスを最適化することが、最も事業に貢献する要素だと考えています。生成AIの普及で開発スピードが上がっていくときに、テストがそのスピードのブロッカーになってしまう可能性を危惧しています。
司会:ありがとうございます。その中でも、特に納品スピードを強く意識されているということですね。広瀬さんはいかがでしょうか。
広瀬:私もクオリティ・コスト・納品スピードのバランスが重要だと思うのですが、危惧しているのはスピード面です。生成AIによってさまざまなものが作れるようになり、開発物のボリュームも大きく増えるだろうと感じています。
これを手動テストだけで対応するのは難しくなってくると思うので、テストする側としては多様な手段を取り入れるのが大事かなと思っています。その中の一つは、間違いなく自動テストですね。
司会:AIがコードを大量に生成するとテストがボトルネックになり得る点は、我々も危惧しています。だからこそ、納品スピードが重要だということですね。伊藤さんはいかがですか。
伊藤:短い時間で多くのもの(コードなど)を作れるようになった今、それらをプロダクトの価値につなげることが非常に大事で、そこがQAが事業貢献するポイントだと思います。
たくさん作った中で手戻りが多いと、プロダクトに価値がある部分の割合が低くなってしまうので、例えばテスト自動化によってそれを抑える。あるいは、品質創造のための取り組みで、たくさん作ったもののうち多くが価値につながるようにしていく。
そういった“変換効率”を高めるQAが、事業貢献するQAだと考えています。
司会:ありがとうございます。長橋さん、お願いします。
長橋:皆さんの話にもあった通り、致命的なリスクを防ぎながら事業スピードを落とさないことをやっていく組織が、事業貢献できているのではないかと思います。
開発スピードが上がる中で、最後の工程だけで品質を担保しようとするとボトルネックになってしまいます。その中で重要なのは、全てを保証しようということではなく、どのリスクを優先してどこまで担保するかを戦略的に決めることです。そのために、より上流でリスクを洗い出す、優先度を明確化する、範囲を戦略的に決める、といったことをやっていき、バグを見つけるだけの組織から脱却を図る必要があると思っています。
ひとことまとめ:QAの事業貢献は「品質を守る」だけでなく、QCDを最適化してスピードに追随する“仕組み”を作ること。
続いて、議論はテスト自動化の価値へ。自動化が事業価値につながったと感じた瞬間や、現場で実感している具体的な効果が共有されました。
司会:次はテスト自動化にフォーカスします。自動化が事業価値につながったと実感したタイミングを聞かせてください。
野原:テスト業務のスピードは、手動対応だと担当者の経験によって変わってしまいます。
さらに、事業が急拡大する中で、手動対応を続けていくのは、採用や育成面の観点から限界がありました。
自動テストを導入して、この手動の限界を超えられたのが転換期でした。自動化自体は2021年頃から推進してきていましたが、生成AIが登場したことで、2025年にテスト業務をフルオート化するプロジェクトをスタートしました。
広瀬:自動化を進めると、自動テストならではの品質保証ができて、機械じゃないと難しい部分も検出してくれる感覚があります。例えば、人間だと目の錯覚で見落としてしまいがちな画像の差分も検出してくれます。さらに夜間に、機械が多くのプロジェクトを同時並行でテストしてくれるため、人間は朝の出社時に、機械が検出した不具合を確認する、といった働き方ができるようになりました。機械を使うことで、人間は人間が得意な領域に時間を割けるようになったと思いますね。
伊藤:自動化によって不具合を早期発見することで、開発の修正コストを下げられると考えています。
さらに、プロダクトが増えてもQA人員が比例して増えない状況では、開発の上流工程から自動テストの仕組みを適用していくことが重要です。そうすることで、開発のガードレールにもなるのではないでしょうか。
長橋:テスト自動化には、テスト設計の部分の自動化と、実行する部分の自動化の2つの軸があると思います。
AIなどでテスト項目が爆発的に増えると、レビュー工程の負荷が大きくなります。そういう状況でも、自動化や仕組み化が進むと、人は「どこに価値があるか」「どこがリスクか」「絶対に落としてはいけないポイントはどこか」といった判断に集中できます。また実行面では、変更が入るたびに重要な動作確認をまとめて素早く実施できる環境を整えることで判断を迅速化し、開発のスピードを落とさないことに貢献できると考えています。
ひとことまとめ: テスト自動化は、品質を守りながら開発スピードを落とさない基盤。
自動化を「導入して終わり」にしないために、継続的に回す仕組みや現場への定着に向けた運用・浸透の観点を中心に議論しました。
司会:何に取り組むと事業貢献が実現されていくのか、皆さんの視点で聞かせてください。
野原:変化し続けることが重要です。世の中のニーズもテクノロジーも変化する以上、かつてのベストプラクティスがいつまでも最善とは限りません。今の時代に何をすれば事業貢献につながるのかを考え続け、やり方を変えていくことが大事です。
広瀬:自動テストもAI活用も、できて当然になっていきます。進化が速いので、情報を取り入れて実践して、手法の引き出しを増やすのが重要です。ある意味アスリート的な世界になってきたと感じています。
伊藤:「事業貢献」という大きな目標は、個人や小チームの頑張りだけでは遠い。部署を越えて巻き込み、組織として自動化の仕組みを広げる力や熱量が必要で、成功する企業にはキーマンがいることが多いです。
長橋: 技術導入だけで終わらせず、自走できる状態にしていくことが大切です。組織設計から踏み込み、体系化した教育コンテンツの提供も定着には重要な要素だと思います。
ひとことまとめ: 価値を出し続ける鍵は、変化への適応×巻き込み×自走。
最後は、AI時代のQAの変化について。役割の広がりや、重心が移る方向性が語られました。
司会:最後のディスカッションです。AI時代のQAの変化を、それぞれの立場で教えてください。
野原:これまでの仕事は基本、人のアサインありきで考えられていたと思うんですよね。
でも今後のAIモデルの成長も踏まえると、AIが仕事をするのが当然、みたいな世界線は来ると思っています。それによって、QAにおいても、AIが前提・中心となるような業務デザインに変えていく必要が出てくると思います。
司会:AIに合わせて仕事のやり方を変えていく、というところもQAに求められていくかもしれませんね。広瀬さんはいかがですか。
広瀬:私は昭和の人間なので、まず型を守ってから応用へ進むという「守破離」を思い浮かべるのですが、今はそうした段階をゆっくり踏むだけでは追いつかない時代になってきています。。積極的に取り入れ、実践を重ねるべきだという方向性にスピードが上がっている感覚です。
思い返すと、小学校ぐらいの時にコンピューターが出始めて「Excelすごい」みたいになったんですけど、それ以上の変化が今起こっているのかなと思っています。
伊藤:自動化によって、QAの中でテストが占める業務の割合はどんどん減っていくと思っています。その分、要件の段階とか、「本当にどういうものを作りたいんだっけ」という段階で、大きく外れないように道を整備する、といったところがQAの仕事になっていくのかなと思います。
長橋:ベリサーブとしては、AIを活用してテストの質を上げる取り組みを進めています。たとえば、テスト設計などにAIを活用して、より高度なテストにつなげていくイメージです。
また、AIそのものに対する品質保証の相談も増えてきています。AIはゼロイチで測れない難しさがあるので、評価の物差し(基準)を作っていくような支援も行っています。
ひとことまとめ:生成AI時代のQAは、テストだけにとどまらず、上流工程で失敗を防ぐ取り組みや、AIそのものの品質保証まで担う存在へと役割を広げていく。
最後に、QAの自動化を考えている方に向けて、明日から具体的に始められるアクションが共有されました。
司会:それでは最後に、QAの自動化を進めたい方に向けて、明日から始められるアクションを教えてください。
野原:まず現状を把握してみましょう。どこに手を入れるかを計画として決めたら、あとは実行に移すだけです!
広瀬:私自身も試行錯誤しながら取り組めています。不安を感じる場合や、着手をためらう場合でも、一歩踏み込んでチャレンジしてほしいですね。
伊藤:普段のQA活動の一つ一つのアクションが、どのように事業貢献につなげられるかを考えてみることだと思います。つながらない部分があれば、そこを掘り下げる必要がありますね。
長橋:新しい技術が次々と出てきているので、まずは自分たちのプロジェクトや実務を分析して、どこを効率化できるかの検討をスタートすることがよいかと思います。
生成AIによって開発が加速する中で、QAの重心は「テストを実行する役割」から「事業スピードに追随できる仕組みを設計する役割」へと移りつつあります。
今回のセミナーでは、生成AI時代におけるQAの事業貢献について、各社の視点から具体例とともに語られました。
品質とスピードを両立するために、QAが担う領域はこれからさらに広がっていきそうです。