【お知らせ】2023年10月1日にLINE Fukuoka株式会社からLINEヤフーコミュニケーションズ株式会社へ社名を変更しました。2023年9月30日以前の記事には旧社名で記載しています。
2022年1月1日から、改正育児介護休業法により「育休」の内容が変わります。 日本の男性育休取得率は、先進国最低水準の7.48%(2019年度)で、政府は法改正により男性育休の取得を推進したい構えです。
【改正のポイント】
①男女問わず妊娠や出産を申し出た従業員に対する、育休取得の意向確認を義務化
②大企業には、男性の育休取得率の公表を義務化
③男性が柔軟に育休を取得できるよう、「出生時育休」を新設
④1歳までに男性は4回、女性は2回の分割取得が可能に
内閣府の調査によると、男性が育休を1カ月以上取得しない理由としては、「職場に迷惑をかけたくないため」(37.2%)、「職場が、男性の育休取得を認めない雰囲気であるため」(32.9%)という回答が多く(*1)、育休取得に 「後ろめたさ」を感じてしまう男性社員が多いことが伺えます。
男性育休を2ヶ月以上取得した社員たちに、「男性育休の後ろめたさ」を乗り越えた背景や、取得によるキャリアの影響、男性育休の意義など、LINE Fukuoka Press編集部員があれこれ聞いてみました。
育休取得を検討しているけど不安で一歩踏み出せない…そんな男性の皆様や、男性育休の必要性について懐疑的な方のヒントになれば嬉しいです。
LINE Fukuokaの男性育休取得状況(2020年度)
取得率:46.2% 平均取得日数:102.6日(中央値:90日)
※写真撮影の際のみ、マスクを外しています
職場への後ろめたさを乗り越えた背景
─お二方とも、それぞれの部署で男性育休第1号さんです。取得に不安はなかったですか?
平:正直不安でした。僕は営業だから、担当しているお客様にも負担をかけてしまうし、担当顧客の対応をお願いするメンバーの業務も増えてしまう。
種子島:僕もマネージャーだし、責任者を務める大きなプロジェクトもあり、年1番の繁忙期だったので、休むことで周りのメンバーに負担をかけることが不安でした。
─やはり残ったメンバーの負担が気にかかりますよね。
職場に迷惑をかけたくないなど、育休取得に後ろめたさを感じる男性は多いようです。皆さんはそんな「後ろめたさ」をどのように乗り越えましたか?
上司・職場の理解
平:相談した時の上司の後押しが大きかったです。最初は1ヶ月で考えていたけど、「担当顧客をメンバーに割り振るから、中途半端に休むより思いきり休んだ方がいい」と上司が言ってくれて。取得期間は夫婦で話し合って、育児休業給付金の額が変わらない半年まで取得しました(*2)
種子島:僕も上司が応援してくれました。普段からキャリア観や「子どもを持ちたい」などのライフプランについて話していことも影響しているかも。育休期間については、当初は2週間の予定でした。子育ても仕事も人生で大事にしたくて、子育ても第一線で活躍したい思いがあり、子育てについて集中的に学ぶ修行期間として2週間の育休を考えていました。でも現役ママでもある人事の方が「2週間だと産褥期も終わっていないし、個人的には少しでも長い方がママとしては助かると思いますよ」とアドバイスをくださり、素直に2ヶ月にしました。
─上司の反応によっても「後ろめたさ」の重みは変わってきますよね。
普段から職責を果たしていることは前提ですが、育児などのライフプランについても前もって相談しておくと、上司の理解も得やすくなるかもしれませんね。
▼インタビュイーの上司にも、「男性育休」についてインタビューを行いました
─業務を引き継ぐメンバーには、どんなケアを行いましたか?
種子島:早めに育休をとる可能性について伝えて、その前提で中長期の計画をプロジェクトメンバーと話し合いました。大きなイベントは休む前に完了するようにしようとか。でも結局、プロジェクトの時期も出産の時期もズレて、年1番の繁忙期に育休を取得することになり、引き継ぎ業務が予定通りに行かなかったのが反省点です。
平:チーム内で歴が長く、質問を受けることが多い立場だったので、より丁寧な回答+ナレッジを共有するようにしました。本当はWikiに、新人メンバーからよくある質問集などをまとめておきたかったけど間に合わなかったです。反省して、育休復帰後にそれらの情報をWikiにまとめて、ナレッジをオープンにしています。
─予定日があっても、いつ子どもが生まれるか分からないですもんね。病気でも介護でも、休業しないといけない事案がいつ発生するかなんて予測できないから、つねに自身の業務やナレッジを可視化しておく習慣が大切ですね(私も業務情報をまとめておこう・・・)
男性育休の意義とは?
育児は、その後の夫婦関係に影響がでるほど大変
─日本の男性育休取得率は7.48%とまだまだ低いです。
「会社を休んでまで父親が育児に参加する必要性」に懐疑的な人も多いと思います。実際に取得してみていかがでしたか?
種子島:「1人で育てるのは無理」と実感しました。3時間に1回授乳、その授乳も1時間くらいかかり、そのあと寝かしつけに1時間以上、おむつ替えに家事…。この時点で寝る時間も食事する時間もないですよね。その上、「出産で女性は大きな事故にあったくらいのダメージを受けている」という話もあるくらい、出産後は通常の状態ではないから、奥さん1人は大変だと思います。僕は最初の1ヶ月は授乳以外させないくらいの勢いでやっていました。でも妻からすると僕が皿を洗ったあとは水が飛び散っているとか、家事が雑な点にかなり我慢してもらっていたようですが。
平:僕も妻が育児に集中できるように、率先して家事を行うように心掛けましたね。その上で、授乳の後の寝かしつけやお風呂、おむつ替えを妻と協力しました。夜中の育児も交互にやることでお互いに睡眠時間がとれたから、育休をとって子育てに参加してよかったと思っています。自分の子どもは寝てくれる子だったからまだ助かったけど、寝ない子だったらもっと大変だったと思います。
平さんと種子島さんの育休期間中のタスク
<家事全般>
買い出し、掃除、皿洗い、朝〜夕食作り、洗濯
<育児(夫婦で交代するタスク含む)>
赤ちゃんのお風呂、おむつ替え、ゲップ、寝かしつけ、スキンケア、肛門刺激、着替え、ミルク、育児タスクの記録(何時に寝た/起きた/排泄の状態など)
─ちなみに、奥さんが里帰り出産・育児ができる状況なら、わざわざ父親が育休を取得する必要性はない、という意見もあると思うのですが、その点についてはいかがですか?
平:自分の子どもだから、自分と奥さんで育てたかったんです。奥さんのご両親に頼るばかりで自分が育児に参加しないことに違和感がありました。
種子島:自分本位、と言われるかもしれないですが、僕も自分と奥さんで子どもを育てたくて、里帰り出産・育児を選ばなかったです。気づいたら自分の子どもが大きくなっていた、なんてことになったら一生後悔すると思って。
─「自分の子どもだから自分で育てたい」は、非常に真っ当な意見なのに、父親の口からでたことに新鮮さを感じました。
「子どもは母親が育て、父親は働く」という因習は、女性の社会参画だけでなく、「自分の子どもを自分で育てたい」という父性の欲求も、蔑ろにしてきたのかも。
日本の父親の平均育児時間は母親の2割程度(*3)で、日本の家族関係の傾向は「母子密着・父親不在」とも言われてきました。父親が育児に参加しやすくなることでそれも変わってきそうですね。
ちなみに、出産直後から乳幼児期にかけて夫が育児に参加したかどうかが、今後の夫婦関係に大きく関わる、というデータもありますね。
種子島 & 平:この表、妻に見せられました(笑)愛情落ちるらしいよって言われて『嫌だ。頑張る』ってなりました。
育児の一番大変な時期を、夫婦で乗り越える体験は一生もの
平:育児に集中する期間があることで一生ものの素敵な体験もできると思います。
育休前は「育児って大変なんだろうな」と漠然としか思わなかったけど、実際に参加したら、寝られないし、やることが多くて毎日クタクタ。どれだけ大変なのか体験できたのが僕にとっては大きな価値でした。ここまで大変なことを夫婦で乗り越える機会ってそうないし、子どもが大きくなって「あの時大変だったね〜」と夫婦で振り返ることができます。
種子島:確かに、夫婦人生の中でトップレベルの苦楽を共に体験できたことは、大きな意義かもしれません。毎日24時間子どもと過ごしたことで、成長をつぶさに見ることができました。髪がちょっと減ってきた、顔が変わってきた、目元がどっちかに似てきた、とか。
平:あーそれ、間違いない!長く一緒にいるから、そういう成長の機微を感じることもできますね。
─赤ちゃんの成長と向き合った時間、育児の一番大変な時期を二人で乗り越えた時間は、長い夫婦人生の中で大きなハイライトになりそうですね。
育休復帰して感じた、キャリア・働き方への影響
自分がいなくても回る職場になっていた
─キャリアや業務への影響を懸念して、長期休業に抵抗を感じる方も多いです。2ヶ月ぶり、半年ぶりに現場に戻ってみてどうでしたか?
種子島:僕は2ヶ月取得しましたが、前と同じ役割で戻ってきました。でもやはり変化はあって、自分がいなくても回る組織にはなっていました。もちろん回ってはいても、自分が支えていた部分が欠けていたりはします。でもそれって欠けていても良くない?それよりここを伸ばした方が良くない?とかゼロベースで考えられた気がします。
長期で休んでも全く前と変わっていないのは組織として不健全だし、変わるべきだと思います。だから、「育休取ってもキャリアや業務になんの影響もないよ」とはいかないのが現実です。でも、その影響が悪い方向にいくか、良い方向にいくかは自分次第。プチ転職みたいな経験をする覚悟は必要だと思いますね。
平:僕も、半年ぶりに復帰したら自分がいなくても回る組織になっていました。育休中に新しくメンバーが加わって顔ぶれも変わっていましたし、販売するサービスの内容も変わっていました。
復帰後2週間くらいで普通に仕事はできましたが、営業としての勘を取り戻すのにはもう少し時間がかかりましたね〜
─長期で休めば、サービスもメンバーも変わる。しかも自分がいなくても回る組織で自分の価値を示すのは、転職に近い覚悟と前のめりな姿勢が必要ですね。
復帰しても、子どもがいない時とは勝手が違う
─お二方ともお子さんが0〜1歳でまだまだ手がかかると思いますが、仕事と両立する上で苦労している点・工夫している点などありますか?
種子島:僕はワーカホリックタイプだったので、両立にめちゃくちゃ苦労しています。工夫しているのは一般的な優先度整理とかTODO管理ですね。以前は、仕事でワクワクしている時、時間を気にせず業務に邁進していましたが、今は定時になればワクワクしたままPCを閉じるようになりました。育児があるので、仕事のワクワクを分割で楽しむように意識しています。
平:いつ急に休まないといけないかわからなくなったので、仕事は翌日に持ち越さず、その日のうちに終わらせるようにしています。保育園に行くと、病気をもらってきたりするんですよ。妻と子どもが病気で弱っている時は自分が有給取ってフォローしないといけないから、同僚に助けてもらっています。
種子島:保育園に行くと楽になると思っていました・・・・
平:僕もです。実はそうじゃないんですよ、これからまだまだありますよ〜
2022年から男性育休に関わる法律が変わるけど・・・
改正育児介護休業法で、育休を分割して取得できるようになります。この改正についてお二人はどう思われますか?
平:すごくいいと思います。自分みたいな営業の仕事だと、引き継ぎを行うと役割が0になるから、短期に何度も休むのはあまり適さないけど、繁閑がある業務なら、繁忙期だけ復帰みたいな働き方ができるから会社も家庭も両方大事にできますね。
種子島 :取り方の多様性が生まれて良いですよね。繁忙期など明確にとれない理由があって取得できなかった人の選択肢が増えるから、取得者数は増えそう。今後、男性育休取得推進に消極的な企業と積極的な企業の間で、取得者数の差がますます広がっていきそうだな、と思いました。
一歩踏み出せないあなたへ、男性育休の先輩からアドバイス
─おそらく、この記事を読まれている方の中には、育休取得を迷っている方も多いと思います。
ご自身の経験を踏まえて、迷っている方にアドバイスをいただけませんか?
平:僕は上司や職場に理解があったけれど、そうでない事情の方も多いと思います。周りの友人と話すと、「自分の会社はそういう雰囲気じゃないから取りづらい」と言っていたので。僕も職場に理解があってもやっぱり不安でした。
ただ、我が子が赤ちゃんの時期を一緒に過ごすのも、その大変な時期を妻と乗り越える経験もその時しかできない。今感じている不安を乗り越えてあまりある素敵な体験ができますよ。
種子島:人生の優先度の棚卸しをしてみては?その人にとって今の最重要事項がキャリアなら、男女問わず育休を取らない選択肢だってあっていいと思います。
もし、僕と同じく子育てと仕事の両方を大切にしたいなら、パパとして急成長できる最初の期間を大事にしない手はないです。
うちの場合、妻はしっかり休みをとって育てたい派でしたが、第2子の時は、妻が仕事を優先したいと思うかもしれない。夫婦でお互いに人生の優先度が変わることはあるので、その都度、良い分担を探していくといいと思います。
─男性育休取得経験者のインタビューを通して、新世代の父性観を感じるとともに、単身赴任続きであまり家族と一緒に暮らさなかった私の父も、実は子どもに対してこんな思いを抱きながら働いていたのかな?と、胸が熱くなりました。父親の「育児も大切にしたい」という思いが、「職場に迷惑」「自分本位」なんて言われず、当たり前に受け入れられる社会になってほしい、と思います。
今回、育休を取得した社員に「男性育休」について語ってもらいましたが、社員が休業できる職場環境づくりには 上司のマネジメントや風土作りが欠かせません。
次回は、彼らの上司に 「部下の育休に関わる組織マネジメント」についてインタビュー!休業者がでても回る組織の運営ノウハウや、育休取得者の評価や出世への影響など聞いてきました。
現役の管理職さんや、上司からの評価が気になって育休取得に踏み出せない方の参考になるかも?
▼男性育休取得者の上司へのインタビューはこちら
(*1)内閣府調査:https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/result3_covid.pdf
(*2)育休休業期間中は、国から給付金が支給されます。育児休業の開始から6ヶ月前までは賃金の67%支給されますが、6ヶ月後は50%に減額されます
( https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000178877.pdf)
(*3)男女共同参画局:https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-c01-02-2.html