目指すは日本一のAI運営組織!業界未経験でもAI人材に育てられる理由とは?実例でご紹介!
【お知らせ】2023年10月1日にLINE Fukuoka株式会社からLINEヤフーコミュニケーションズ株式会社へ社名を変更しました。2023年9月30日以前の記事には旧社名で記載しています。
この春、ChatGPTをはじめとした生成系AIの急発展で、一気にAIをめぐる動きが活発化しました。これまでより一層、AI人材の育成について機運が高まっているように感じます。
しかし、悩める管理者の皆さまはこう思うでしょう。
「どうやってAI人材を育成したらいいの?」
LINE FukuokaにはAI運営に特化した部署があります。
50名弱が所属するこの部署は、実は全員がAI業界未経験。
しかし、2022年に開催された福岡マラソンでは、お問い合わせAIチャットボットを制作し、その正解率95%!参加ランナーの約10人に1人に利用いただいたそうです 。この実績を例にAI人工知能EXPO2023【春】にも登壇しました。
そこで、本記事ではLINE各種AIサービスの運営業務を担う「AI運営室」の室長、加藤さんにインタビュー。未経験からAI運営のスペシャリストに育てあげるAI運営室の裏側に迫ります。
プロフィール
Service Businessセンター AI運営室 室長
加藤 敏之(かとう としゆき)
― AI運営室ではどんな仕事をしているのでしょうか?
加藤:どんなサービスでも同じですが、作ったら終わりではなく、運営していく必要があります。
AI運営室は、文字通りLINEのAIを使った各種サービスの運営に幅広く対応している部署です。カスタマーサポートはもちろん、企画、セールス、プロジェクトマネジメント、運営自体の設計や運用保守などなど。全部運営の業務ですね。
AI運営業務ならではの特徴は、AIに学習させる教師データを作成するアノテーションと呼ばれる業務が存在することですね。種類でいうと「会話系」「識別系」「予測系」のAIサービスの運営業務を一期通貫してサポートしています。
チームの成果の一例として、国立国会図書館が所蔵する1860年明治期以降の資料(247万点)と画像データ(2億2,300万点)を、CLOVA OCRを用いてテキストデータ化するというプロジェクトがあげられます。資料の多くは昭和初期以前の古い資料であり、レイアウトも複雑なものが多い中、目標の97%をデータ化することに成功しました。
▼参考
・国立国会図書館が保有するデジタル化資料 247万点・2億2300万枚超の全文テキストデータ化に「CLOVA OCR」が採用
・国立国会図書館公式サイト 「令和3年度デジタル化資料のOCRテキスト化」
その他にも、各サービスの業務効率化を推進し、通常3ヶ月かかっていた作業を1ヶ月に短縮するといった、効率化による実績も多数達成しています。
私たちのスローガンは「日本一のAI運営組織」になること。
根幹となるのは何といっても「人」、つまりAI運営人材です。AI未経験の人材をAIサービスを運営できる人材に育てることに力を入れて取り組んでいます。
ー AI運営人材ってどんな人でしょうか?
加藤:ざっくりお伝えすると、AIサービスの運営について学習し理解している人のことです。
例えば、AIの教師データを作るアノテーション、性能評価、テクニカルサポート・カスタマーサクセス・セールス・マーケティングなど、関連する仕事はさまざまあります。AIを事業に活用しようと思ったら絶対に必要になってくる人材です。
― AI運営人材になるためにはどんなスキルが必要ですか?
加藤:AIに関わるからといって、エンジニアである必要はありません。事実、50名弱が在籍するAI運営室にはエンジニアはおらず、業界未経験のメンバーで構成されています。
だから入口で必要なスキルというものはないのですが、好奇心や成長力は必要ですね。
私たちの部署では、AI運営人材としてレベルアップしていくために必要なスキルを定めています。日々アップデートされるAI・DX事例の収集力や、必須用語、最低限の仕組みの理解などの体系的なAIスキル、その中でそれぞれ自分の得意分野を磨き、追い求め続けられることが大切であると考えています。
※左図引用先「Growth X」(https://lp.grtx.jp/ai)
― AI・人工知能EXPO 2023 「春」に登壇したそうですね。
加藤:はい、福岡マラソン2022のLINE公式アカウント上で使える、お問い合わせAIチャットボットを作成したことを題材に、我々の組織づくり、成長支援について話しました。
福岡マラソンのAIチャットボットは、制作期間は1ヶ月弱、制作したメンバーは約30人で正解率95%(社内の精度評価)という高水準の数値をマーク。通常であれば80%以上で公開可能な範囲であり、90%越えはほぼありません。その中で95%をたたき出したのはすごいことです。 関わったメンバーがAI運営人材として成熟していたからだと自負しています。
繰り返しますが、関わった30人は全員AI未経験で入社したメンバーです。
登壇のあと、名刺交換の列ができたのは初めての経験でしたね。
大小さまざまな企業のIT担当の方が来てくれたのですが、「AI人材の教育ができなくて困っている」という声が多かったことが印象に残っています。進め方がわからない、どう教育していいかわからない、予算もつかないし、そもそも教える人もAIがわからない……。多くの悩みを抱えているようでした。この分野での人材育成に対する関心の高さを実感しましたね。
― ズバリ、未経験でもAI運営人材が育成できる理由とは?
加藤:大きく2つポイントがあります。
育成するための研修カリキュラムとサポート体制が豊富であることと、組織体制の工夫があることです。
① 研修とサポート体制が豊富だから自己研鑽しやすい環境がある
平均毎週1〜2時間スキルアップに時間を当てられる時間を設けていて、この時間を活用して2割強のメンバーがすでにG検定(※)に合格!
応用情報技術者、基本情報技術者、Python基礎検定 、情報セキュリティマネジメント 等多様なIT資格を自発的に取得する文化があり、毎月自分自身をアップデートする仕組みになっているので、必然的に組織としてできる事が毎月増えているのかなと思います。
※一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する、ディープラーニングの分野を中心にAIを事業活用する能力や知識を有しているかを認定する検定。
② 組織全体の人材育成・業務効率化を行う専門チームを設けている
AI運営室の組織構造にも秘密があります。
音声系サービスや画像動画系サービスの運営の現場を担う2チームの他に、室内すべてのリーダー全員が所属するAI Managementチームがあるんです。
このチームは、組織全体を横断して人材育成や業務効率化に取り組むことをミッションとしており、先ほど説明した研修やサポート体制について企画・検討しているのもこのチームです。ビジネススキル全体を底上げするための取り組みも取り入れていますね。
この体制はLINE FukuokaのAI運営室の強みであると考えています。
運営業務は気を抜くとただ目の前の仕事をこなすだけになりがちです。しかしその状態を許容することは、クライアントの皆さまに「WOW」をお届けする機会の損失に繋がります。いつでも最高のクオリティをキープするためにもAI Managementチームは存在し、日々組織開発に取り組んでいます。
AI運営室のチームビルディングの様子。画像生成AIを使って「青春っぽい画像」を作る
右はパンをくわえながら走っている女性を作ろうとしてパンがいっぱい出てきたところ
― 日本一のAI運営組織に向けて今後の展望を教えてください
加藤:AIの状況は日々、変化を続けています。同じスピードでキャッチアップしていくために、我々を含めた、この業界にいるすべての組織は成長し続ける必要があります。
直近の展望として、まずは担当するAIプロダクトやサービスを増やしていく想定です。
AIの精度を高めていきながら、日本一のシェアを獲得できるよう伴走していきます。
これらを根気強く継続し、AI運営室を日本一のAI運営組織にしていきます!
運営におけるAIの重要性を啓発するため、AIで生成した自画像いっぱいのTシャツが加藤さんのユニフォーム