安心して迷わず使えるID体験の裏側―ID連携担当者とカスタマーサポートの協働から生まれる信頼

アプリやサービスを使うとき、「ログイン」を行った経験、皆さんあるのではないでしょうか。
ログインをすると個人にパーソナライズされた体験を受けられるようになります。さらに、サービス間でアカウントを連携すると複数のサービスがつながった機能も利用できます。このアカウントを他のサービスと結びつける仕組みが「ID連携」であり、ユーザーが安心して迷わずサービスを利用するための重要な基盤です。
LINEヤフーのID本部は、5,560万※ユーザーが利用するYahoo! JAPAN IDの認証やアカウント管理、そして外部サービスとの連携といった仕組みを設計・運用しています。一方、ユーザーが「ログインできない」「連携がうまくいかない」といった課題に直面したとき、最前線で声を受け止めているのがLINEヤフーコミュニケーションズのIDサポートチームです。
※2024年3月末時点
仕組みをつくる側と、ユーザーに寄り添う現場。両者がどう協力し合い、日々変化するサービスの信頼を支えているのか。今回は、ID本部の山本さんとIDサポートチームの川上さんに、「安心して迷わず使えるID体験」をめぐる両者の取り組みと関係性を伺いました。

山本博子
LINEヤフー ID本部
信販会社で審査フローのペーパーレス化案件に携わった後、ヤフーの連結子会社を経て2013年にヤフー入社。ショッピングやオークションの決済領域で企画職を経験し、現在はID本部にてYahoo! JAPAN IDと外部サービスとの連携を担うプロダクトマネージャーとして、認証・連携基盤の設計と運用に携わっている。

川上和也
LINEヤフーコミュニケーションズ ID・LYP CS推進部 IDサポートチーム
2009年に入社し、Yahoo!オークションやYahoo!ショッピングなど複数サービスのカスタマーサポートを担当。2018年よりID関連のサポート業務に従事し、スーパーバイザーとしてユーザーから寄せられる声を整理・共有しながら、サービス改善につなげる役割を担っている。
仕組みをつくる本部と、ユーザーに寄り添う現場
― ID本部の主な役割や業務内容について教えてください。
山本:Yahoo! JAPAN IDを使ってくださっている方は月間5,560万人。私たちID本部はその方々がログインや新規登録をできる仕組み、そしてLINEヤフーが提供する各サービスや外部サービスとIDをつなぐプラットフォームを設計・運用しています。
認証やIDの管理、外部サービスとの連携といった大きな機能領域があり、それぞれにマネージャーがいます。私はその中でID連携を担当しています。ユーザーにどれだけ簡単で安全なログイン体験を届けられるかを常に検討しながら、改善や新しい機能の企画に取り組んでいます。
― ID本部が考える「安心して迷わず使えるID体験」とは、どんなものなのでしょうか?
山本:安全であることが第一です。同時に、5,560万人という幅広い年代の方にとって、できる限り簡単で快適に感じられることも大切。人によって「安心」「便利」の感覚は異なりますが、誰もが不安なく利用できるログイン体験を目指しています。
― 一方で、IDサポートチームはどんな役割を担っているのでしょうか?
川上:ログインできない、連携ができないといったID特有の課題に直面したとき、最初に問い合わせを受ける窓口がIDサポートチームです。私たちは、ユーザーが迷わず安心して始められる「サービスの入口」を整えることを意識しています。単に解決するだけでなく、その声をどうサービス改善につなげられるかも大切にしています。
― ユーザーの声は、具体的にどのように活かされているのでしょうか?
川上:日々いただくお問い合わせの中には、設計段階では想定できなかった課題も多くあります。そうした声を整理し、山本さんを含むID本部の皆さんに共有することで「問い合わせがそもそも発生しない体験」を一緒に目指しています。FAQのすり合わせや問い合わせ傾向の共有を通じて、リリース前から改善を検討できるような連携も行っています。
「同じ方向」を向くための連携と信頼関係
― 大規模なID連携リリースに向けて、両チームはどのように連携を図ってきたのでしょうか。
山本:例えばLINEアカウントとYahoo! JAPAN IDのID連携のような大規模な取り組みでは、影響範囲が非常に大きいため、準備には長い時間をかけました。仕組みづくりと並行して、IDサポートチームとFAQのすり合わせを重ねたり、想定される問い合わせを事前に整理したりしました。ユーザーがLINEに問い合わせてもYahoo! JAPANに問い合わせても、同じ回答が得られるよう、LINE側のカスタマーサポートとも調整を進めていましたね。
川上:毎週の定例で問い合わせ状況を共有しながら、「このままだと問い合わせが増えそう」という部分を事前に指摘するようにしていました。ID本部が想定していなかったリスクも、現場の目線から伝えることで改善につながるケースは多かったと思います。
― ID本部とIDサポートチームが「同じ方向を向く」ために意識していることは?
山本:FAQ・ヘルプ・エラーメッセージの表現まで突き合わせ、ユーザーが不安を感じにくい伝え方を共同で設計しています。もしIDサポートチームから「これはやめた方がいい」と止められた場合、そのまま押し通すことはありません。必ず背後には同じ課題で困るユーザーがいるからです。そうした指摘を真剣に受け止め、改善につなげています。
川上:こちらの意見を尊重してもらえるので、安心して意見を出せます。対等な立場で改善に向き合える関係性があるからこそ、同じ方向を向けていると実感しています。
「ローンチがゴールではない」―― 改善を重ねて築くユーザー体験
― ユーザー体験を向上させるために、これまでどんな工夫や改善をしてきたのでしょうか。
山本:過去には、ローンチのタイミングで準備した対応やユーザーへの案内が十分ではなく、その結果、問い合わせが増え、回答にも時間がかかってしまった苦い経験もありました。
その経験を踏まえ、それ以降は準備期間をしっかり確保し、IDサポートチームと事前にFAQをすり合わせたり、問い合わせ自体を未然に防ぐ工夫をしています。具体的には、ユーザーがどのように連携・解除を行なったかを確認できる仕組みを整えたり、エラーコードを見れば原因の目安がわかるよう改善しました。
川上:画面上での改善はIDサポートチームにとっても大きな助けになりました。ユーザー自身が自己解決できるケースが増え、私たちも案内しやすくなったことで、よりスピーディーに対応できるようになっています。
さらに、チャットボットを導入したこともあり、ユーザーが身近に使っている環境から気軽に問い合わせできるようになり、多くの解決につながりました。
― ID本部とIDサポートチームの協働を通じて、どんな学びや気づきが得られましたか。
山本:一番大きいのは、「ローンチがゴールではない」ということです。サービスはリリースしてから本当のスタートで、実際に使っていただく過程で新たな課題が出てきます。想定から漏れた部分をどうフォローし、どれだけ早くユーザーが不安なく使えるようにするかが大事だと改めて実感しました。
川上:もしID本部とIDサポートチームがバラバラに動いていたら、後から食い違いが出てユーザーに迷惑をかけてしまいます。だからこそ、両チームが同じ場に集まってすり合わせを重ねることで、大きな混乱もなく、ユーザーに安心して使っていただける対応ができていると思います。「同じ方向を向くこと」の大切さは日々実感しているので、これは今後も続けていきたいですね。
さらなる「安心して迷わず使えるID体験」を目指して
― 今後、どのようにユーザーにとっての価値を高めていきたいと考えていますか。
山本:IDはサービスの入口であり基盤です。より安心で便利な体験を届けるために、IDサポートチームと対等な関係で連携しながら改善を重ねていきたいと思っています。これまでの経験を生かして「ユーザーにストレスを与えない」「できるだけ早く回答する」といった点をさらに強化していきたいです。
川上:私たちも、ユーザーの声をサービス改善につなげる役割を果たし続けたいです。連携の過程ではさまざまな課題や調整が生まれますが、それを一つひとつ乗り越えること自体がやりがいだと感じています。ID本部とタッグを組みながら「安心して迷わず使えるID体験」を実現し、サービスの信頼に貢献していきたいです。
「安心して迷わず使えるID体験」こそが、サービスの入口を支えています。その安心と利便性を守るのは、設計を担うLINEヤフーID本部と、現場で声に向き合うLINEヤフーコミュニケーションズIDサポートチームの協働です。両者の挑戦はこれからも続き、ユーザーの信頼を土台に、より安心で迷いにくい体験を広げていきます。