年明け応募数が前年同月比「最大10倍」に急増。「お正月の再会」を逃さないリファラル採用術を公開
都市部への人口流出や労働人口の減少により、年々難易度が増す「地方採用」。福岡に本社を置くLINEヤフーコミュニケーションズも、その例外ではありませんでした。
しかし私たちは、既存の「リファラル採用(社員紹介)」の運用にマーケティング視点を取り入れて改革を行うことで、採用コストを年間約2,000万円削減しつつ、候補者の入社決定率36%超、リファラル応募者数は最大で対前同月比10倍にまで伸ばすことができました。
今回は、このプロジェクトを牽引した採用推進部の角に、「マーケティング」と「候補者体験」の視点から実施した、「地方採用に勝つ」リファラル改革の裏側を聞きました。
採用推進部 中途採用パート
角咲来 Sakura Sumi
化粧品会社で、マーケティング・採用を経験し、2024年6月にLINEヤフーコミュニケーションズの採用推進部に入社。マーケティングの視点を強みにした採用企画が得意。
認知度98%でも「動かない」組織の壁
リファラル採用とは、社員から友人や知人を会社に紹介してもらう採用手法です。 昨今、転職顕在層へのアプローチだけでは採用目標の達成が困難になっています。そこで当社は、潜在層へのアプローチ強化としてこの「リファラル採用」に注力することになり、私がプロジェクトにアサインされました。
現状分析のため社内アンケートを実施したところ、制度の認知度は98.7%と非常に高い状態でした。「機会があれば友人に紹介したい」という意向を持つ社員も約7割にのぼります。 しかし、実際の紹介数は伸び悩んでいました。

そこにあった課題は、「制度詳細の理解不足」と「きっかけづくりの不足」です。 「知っているけれど、具体的にどう動けばいいかわからない」。このボトルネックを解消するため、マーケティングの視点を使い、主に4つの施策を実行しました。
施策①【種まき】「7月7日はリファラルの日」。紹介したくなる土壌づくり
最初のステップは、リファラル採用に対するイメージを「なんとなく知っている」から「自分ごと」に変えるための理解促進です。
社内報やブログで、実際にリファラル採用された社員のインタビュー記事を発信。さらに、メルマガ「月刊りふぁらる」を配信し、定期的に制度に触れる機会を作りました。
さらに、7月7日を社内限定で「リファラルの日」に制定しました! 「リファラル=大切な人との再会」と定義し、織姫と彦星になぞらえて、年に一度、旧友に想いを馳せるきっかけを作りました。 常に制度を思い出してもらうための、遊び心を取り入れた「種まき」施策です。

施策②【ターゲット戦略】「管理職」という有力チャネルの開拓

リファラルを増やすため、「誰にアプローチすべきか」も重要です。そこで注目したのが「管理職層」です。
管理職はキャリアが長く、社外の人脈(紹介母数)自体が多い傾向にあります。マーケティングにおける「有力なリード(見込み客)を持つ層」として管理職を定義し、積極的にリファラルの説明会や個別フォローを行いました。 また、まずリーダー層に行動してもらうことで、現場メンバーにも「リファラルは当たり前の活動」という意識を浸透させる狙いもありました。
管理職の皆さんを採用の当事者として巻き込み、定期的なコミュニケーションで各組織の状況を確認しながら進めたことで、組織全体のリファラル推進へとシフトさせることができました。
施策③【モーメントマーケティング】「帰省」を狙ったインセンティブとツール
マーケティングでは「いつ情報を届けるか(タイミング)」が重要です。当社は、地元の友人と会う機会が増える「お盆期間」や「年末年始」こそが最大のチャンスであると捉え、2つの施策を打ちました。
①インセンティブ増額キャンペーン
お盆やお正月の帰省シーズンは旧友と再会する機会も多いと考え、紹介インセンティブを増額するキャンペーンを展開。 この施策により、お正月明けの1月〜3月の期間は、最大対前同月比10倍の応募者数の月もあり、休み明けに大きな応募の波を作ることに成功しました。
実際、帰省シーズンのタイミングで地元の集まりで友人に会い、転職活動中であることを知って紹介に至った事例や、年始の親族の集まりで会社の話をしたことが応募につながった事例も生まれています。帰省シーズンは、リファラルを活性化させるうえで最適な時期であると言えます。

②リファラルカードの制作
久々に会った友人に自然に渡せるよう、帰省シーズンのタイミングに合わせてデザインにこだわった「リファラルカード」を制作しました。
目指したのは、単なる会社案内ではなく、受け取った友人が少し特別な気持ちになれる「ギフト」です。
テキストには高級感のある光沢加工を施し、触り心地の良い紙を選定。そして裏面には、紹介する社員が友人へ一言添えられる「手書きメッセージ欄」を設けました。

「お正月で親戚の集まりで話の種でカードを見せたら、それがきっかけで応募してくれた」
施策④【候補者体験】面談数は1年で100件以上。ご縁に全力で向き合うタレントプール運用
リファラル採用において最も重視したのが「候補者体験」です。 当社は、紹介された候補者に対して、いきなり選考へ進めるのではなく、候補者の状況に応じて面談機会を設計しています。仕事理解を深めるための面談に加え、人事面談、必要に応じた面接対策の電話面談などを組み合わせ、疑問点の解消と相互理解を早期に進める運用を実施しました。年間100件以上の面談を通じて、候補者の志向や希望を把握し、意思決定の納得感向上を図りました。
もし当初のポジションでマッチしなくても、そこで終わりにはしません。 「この方のスキルが活きる場所は他にないか?」「希望されている働き方が実現できるポジションはないか?」と、採用担当が各部署を回り、適切なポジションを継続的に検討します。
「紹介されて終わり」ではなく、ご縁に全力で向き合う運用によって、当初は採用とならなかった方も別のポジションで採用につながり、これを積み重ねることで採用決定率の向上につながりました。
こうしていただいたご縁に全力で向き合った結果、残念ながら採用に至らなかった候補者の方からもお礼のメールをいただくまでになりました。こうした積み重ねにより、継続的に知人を紹介してくれる社員も増えています。
リファラル経由の採用決定率は驚異の36.3%!
これらの取り組みにより、リファラル採用の数字は大きく飛躍しました。
【2024年9月〜2025年10月の実績】
リファラル経由の応募数:前年同期比 229%
リファラル経由の入社数:前年同期比 308%
リファラル経由の採用決定率:36.3%
採用実績全体のリファラル比率:25%
社内マーケティング・候補者体験の視点で取り組んだアプローチと社員の協力により、カルチャーフィットする即戦力人材の採用成功につながりました。 また、エージェントを介さないことによって、採用コストについても、約2,000万円の削減を達成しています。
採用推進チームが描く、未来のリファラル文化

リファラル採用とは、単なる「紹介制度」ではなく、社員自身が「一緒に働きたい仲間を迎え入れる文化」を創る取り組みだと考えています。
会社の大切な財産となる人財の採用を、各組織が主体的に人から人へ繋がるリファラルで組織を作っていく未来を思い描いています。
今後の展望としては、企業文化としてリファラル採用が根付くために、キャリア登録の本格導入や参加型リファラル施策の企画など、社員と一丸となって応援できる環境を目指して取り組んでいきます。