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【CEO出澤×COO鈴木/後編】“WHY”がある、“濃度”の高いチャレンジを―LINEが抱える課題と、拓きたい未来

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1月14日、LINE Fukuokaにて、全社戦略共有会 「LINE Fukuoka Kick-off Meeting 2020」が行われました。

当日はLINE株式会社CEOの出澤も来福。
会の終了後、LINE Fukuoka取締役COO鈴木と行った対談の様子を、前編・後編・番外編の全3回に渡りお届けいたします。

「LINE Fukuokaへの期待」について語った 前編に続き、後編のテーマは 「LINEが抱える課題と未来」
LINEグループの経営の難しさと面白さ、成長のために必要だと考えていることについて意見を交わしました。

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“WHY”が一番大事。「前例」も「お手本」も無い経営スタイル

出澤:私、この会社に自分が合っているなと感じる点があって。
共感力が高いというか、だいたいのことに対して「いいね」って思うんですよ。

鈴木:めっちゃ良い性格ですね。(笑)

出澤:それは多分、多様性のある会社には合っていて、

鈴木:社長にぴったりじゃないですか。

出澤:逆に言うと、自分にとって「これだ」というのはそんなに無いんです。
この考え方もいいね、それもありだよね、と。

経営のスタイルって、私とCWOの慎さんも全然違うんだけど、色んな経験をしてきた中で、正解ってひとつじゃないんですよね。
それは会社全体でもそうだし、個人の企画でもそう。
これだけ世の中が変化してる時代にあっては、何が正解かわからない。
全部可能性があるし、とは言え経営は一定の重みづけをしながら取捨選択をしないといけないんですが。その中で、自分は共感力が高い方だなと後から気づいたんです。
流されやすいということかもしれないけど。(笑)

鈴木:いやいや。令和時代の経営者なんじゃないですか。共感力が高い経営者。
色んな経営者がいる中で、どんな経営スタイルでいこうかとか悩むんですか?

出澤:それは悩みますよね。やっぱり正解がないじゃない。
我々のWHYの部分というか、原点ややりたいこともある中で、社員や関係者も増えていくし、自分たちも変わらないといけない。主語もアップデートしていかないといけない。

でも、そこは慎さんや舛田さん(CSMO)と議論しながら決めていける。ひとりじゃなく、トロイカでやっているので、ある意味常に壁打ちしながら決められるというのは、恵まれているなと感じます。

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LINEはダイバーシティもあり、グローバルユーザーも抱えており、投資規模も大きく、かつ非常にサービスに寄った経営の考え方をしている。 前例やお手本となるモデルが無いんですよね。

でも、戦後日本の大企業になった会社ってビジネスというよりは、「こんな面白いものつくりたい」とか「全ての方にテレビを届けたい」とか「すごく速い車つくりたい」とか、
ライト兄弟が「飛行機飛ばしたい!」と思ったのに近しいWHYをみんな持っている。

慎さんが「WHATではなく、WHYベースで考えることが大事」とLINER(社員)に話していますが、戦後日本の大企業を見てもそうじゃないかなと思うんです。
やりたいこと、成し遂げたいことがある会社はやはり強い。

過去の成功事例に学ぶことも大切ですが、今目の前にあることを感じて考えて、「想い」に近いところでエネルギーを持ち続けられる会社かどうかが一番大事だと思っています。

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合理的な目標設定の一方で、それを壊す“WOW”を望んでいる

鈴木:一方で出澤さんって、営業だったこともあり数字をしっかり見る方だなという印象があります。
世界のベンチマーク企業との成長率の比較も見られていますが、驚異的な成長率を出している企業に、何があれば届く、あるいは何が足りないから届いていない、と考えていますか?

出澤:緻密な計画を立てて進んでいく、ということももちろん大切ですが、一方でこういう業界にいると、 どこかのサービスで、1日で100万ユーザーを超えてくるような「WOW」的な成長をする可能性があんですよね。そういうWOWの先には収益がついてくる。

そういう中から、LINEが出たときのように大きな成長をしてくれるところが出てくればという思いもあります。

LINEの成長率は国内水準で言うと悪くはないですが、そこに目線を合わせたくない。
「国内で」と言えるのはあと数年の話だと捉えていて、インターネット産業はグローバル化によって今まで以上にリソースの集積が起きてしまう。気づいたときには何もできなくなってしまう厳しさがあります。

今、産業全体がデジタル化していく流れの中で、全ての産業がデジタル的な淘汰の波を受けることになる。さらに少子高齢化の問題もある。
そうなるとやはり国内だけでなく、 グローバル目線で、そこに伍していく気概でないと、10年20年50年と成長していく会社にならないと考えています。


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「研究開発型」の評価基準。永続的な成長のために、「濃度」の高いチャレンジを

鈴木:WOWなサービスが1個でも生まれれば数字は余裕でクリアする、という話の一方、
「サービスが多すぎるから、絞ろう」みたいな話にはならないんですか?

出澤:それで言うと、選択と集中は行っています。カンパニー制もその一環で、サービスの成長も見えやすく、メンバーもコミットしやすい環境になった中で、サービスの取捨選択が起こっています。
ただ、それでも一般的な会社よりはチャレンジの数が多い。
WOWをつくるためには、やはりある程度の手数を打たなければいけないので。

鈴木:そうですよね。

出澤:一発必中で狙っていくこと自体が無理な話で、そういう種目の競技をやっているという認識でいます。本当はもっとバランスを取れるのかもしれませんが、時間との闘いの中で、 LINEとしては新しいチャレンジを第一優先したい。それは経営の意思ですね。

鈴木:なるほど。あとは二律背反することとして、サービスやチャレンジが多ければ多いほど、1個にかける愛情も薄まるのではないかというのを危惧しています。

僕も経験がそんなに多くはないんですが、たとえば前職の時って、サービスをつくろうとすると、かなりしっかり起案しないといけないし、相応の投資計画が無いと事業が始まらなかったんですよね。なので1個サービスが始まると、異常なくらいのめり込んで取りくむし、成功するまでやり続けるという執着心みたいなものがありました。

一方でLINEって、どんどんチャレンジできる。それはいいことなんですが、同時に、1個のサービスに対する愛情が失われるのではないか?と思うことがあるんですよ。

チャレンジしやすいのは良いことでもあるんだけど、失敗しても負うものが無い。
そこって、難しいじゃないですか。

出澤:難しいよね。1年に1個か2個しかサービスをつくらないような会社にはなりたくなくて、いろんなニーズがまだ世の中にはあるから、そこはチャレンジしてほしい。
だから評価の中で、 失敗を咎めることはなるべくせず、成功を褒めたたえるカルチャーにしたいというのがあって。

それに対する批判や疑問があるのは理解しているんだけど、これってチョイスの問題なので、その中から成功が出れば、こういうやり方がいいねとなるし、そうじゃなければ、やはり旧来型のやり方がいいんだねという話になる。

成果は半年や1年で出るものばかりではなく、数年のスパンの中からヒットが出る可能性もある。
その点も踏まえて、チャレンジできる会社の仕組みやカルチャーづくりというのはすごく大事で、
そういう性格・種類の会社ですというのは明確に意識して経営をしています。
そこはLINEという会社の経営の難しさであり面白さですね。

一方で、1個1個のチャレンジはまだまだ改善の余地があると思っています。

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鈴木:なるほど。そもそも出澤さんは、福岡に限らず、LINEの社員ってチャレンジの数が多いと思いますか?それとも「まだまだ」と思ってますか?

出澤:その意味で言うと、 チャレンジは数で語るものではないとも思っていて。数はやっていると思うけど、 どうやって質を上げるか。
LINEは少数精鋭のチームというのを大切にしていますが、分散しつつも、かつてのLINEをつくったような人たちが現れてほしいという想いでやっています。
少ないメンバーの方が色んなことを速くできるはずだし、そういうチームの集合体でありたい。そして、3カ年のストックオプション制度なども含めて、大きな成果に報いる会社にしたいと思っているんですよ。
その意味で、「質」というか、「濃度」や「熱量」はまだまだ改善の余地があると思います。

鈴木:なるほど。

出澤:先ほど、「チャレンジできる会社の仕組みやカルチャーづくり」を意識して経営しているという話をしましたが、鈴木さんが「LINE Fukuokaに入社して、ダイバーシティをものすごく感じた」と言っていたこととも実は裏でリンクしていて。普通の会社って、もっと判断基準とかもわかりやすいと思うんですよ。
多くの会社は売上、収益で語られるので、褒める尺度もわかりやすい。

似てるなと思うのは、 研究開発型というか、 新薬をつくったり、金脈を掘ったり、
当たるかわからないけど当たったら相当すごい、みたいなモデルですね。

既存のモデルがあって、そこを改善させるタイプのビジネスと評価の仕方も違うので、
そこがけっこう難しい。

鈴木:(その例えは)いいですね。

出澤:「普通こうだよね」ではなく、「それが正解なんだっけ」と疑うところから始まる。

鈴木:極端に言うと、優等生的なやり方より、 ちょっと雑でも夢中になることをとにかくやって、そこから大当たりするものを出してこいよ、みたいな感じですよね。

出澤:そうそう。

鈴木:なるほど。

出澤:それは企業の永続的な成長のために、必要なことだと捉えています。たとえばアメリカのフォーチュン500の企業、1955年時点では平均寿命が75年だった。それが2015年においては15年を切った。M&Aとかもあるから正確に言うと違うけど、やはり世の中のトレンドはすごい早さで変わっていて、特にテクノロジーの進化は加速しているし、グローバル化も進行しているので、インターネット業界はもっとサイクルが速くて平均寿命も短いはずなんです。

今は色んなサービスが海を越えてやってくる。かつてはシリコンバレー発のサービスだけだったけど、最近はアジア発のサービスも、世界中の若い人が使うようになってきてますよね。

日本の高度成長って、一番最初に戦後の大企業と言われる会社たちが成功して、ちょっとやそっとじゃびくともしないようなビジネスモデルができた。それをベースに日本という国の経済システムができた。
それこそイノベーションのジレンマで、それ以降、改善を重ねていく経営スタイルが良しとされてきた中で、2010年くらいから環境が大きく変わっていった。

他の会社を否定している訳じゃなくて、やり方の違いだと思うんですが。
たとえば新しい投資を全部やめて、LINEというサービスの収益力を高めればいいという人もいる。そうすれば普通に利益が上がるはずだし、評価する人もいるかもしれないですが。

結局それだと、LINEがピークアウトした瞬間終わりで、企業の15年寿命説というのに抗えないと思うんですよね。
逆説的なんですが、 企業を永続的に成長させようと思うと、自分たちが思った以上に大きな投資を、大きな覚悟で継続しなきゃいけないというのが今の企業のあり方だと我々は見立てている。
特に上場していたり、社会的に大きな期待を得ている企業というのはそうなるしかない。

鈴木:そうですね。

出澤: 我々は本気で世界と戦おうとしている会社だという自負がある。こういうチャレンジをしないと、5年10年100年続く企業になれないはずだと考えています。

鈴木:だからこそ、自分たちがつくったサービスを破壊し続ける、みたいなことにBETし続けていますよね。


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「良いチーム」と、LINERへ期待すること

鈴木:新薬の研究に近い、という話で思い出したんですが、10年ほど前にある会社さんの研究所を取材したことがあって。当時、世界一明るい有機ELを開発した会社です。
その研究所のリーダーが言っていたことを、今も覚えていて。

決して「特別じゃない」チームだったんですよ。世界的にみると。飛びぬけて優秀な人がたくさんいるわけでも、資金が豊富なわけでもない。ずっと会社に投資してもらってたけど、何年も結果がでなくて、いよいよストレスもピークで。そんなときにふとメンバーを見たら、ひとりひとりは誰も世界一じゃないんだけど、この人はめちゃくちゃ数学に強いとか、そういう特長がそれぞれあったと。その人の言い方で言うと、「それをピックアップして、ひとつのボックスにいれたら、そのボックスが世界一になった」と。

出澤:いい話ですね。

鈴木:実際、研究所に行ってメンバーの話を聞いたり、研究してるところも見せてもらったんですが、皆さんめちゃくちゃ楽しそうに働いているんですよ。

これはすごいなと思って。こんなに楽しそうに研究していて、世界一を取ったチーム。
言い方は悪いですが、確かに一人ひとりは天才に見えないというか、皆さん普通の人なんですよ。

そんなふうにチームがつくれたら最高だなーと思っていて。
それぞれが自分の良さを生かしているから、人に感謝されて、全員が輝いている。
ひとりひとりのいいところを集めたら、チームで世界一になった。
そのときから私のチームづくりの指標になっています。

出澤:素晴らしい。

鈴木:それも多分新薬の話に近いと思うんですよ。何年かかけて生まれた成果。


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出澤:チームの話で言うと、慎さんの「LINEのチームが成功すると確信した時の話」も象徴的でしたね。
LINEの初期の、本当に一番大事な時期に、ダウンロード障害が起きて。その時に、メンバーが本当にワンチームになって、直接関係ない人も「何か手伝えることがあったら声かけて」と。慎さんはその様子を見て、このチームは絶対成功する、このプロジェクトがダメでも、次のプロジェクトで絶対に成功するチームだと確信したという話。

チームの妙というか、自分がどうしたいというよりも、 チームの成功のために一人ひとりが活き活きと動けるチームは強いですよね。

少人数のチームは意識的につくっていますが、そこにきちんと「想い」があるかというのは我々の課題としてもあるし、LINERのみんなにも問いたいところですね。

鈴木:LINE Fukuokaに限らずLINERに対して、もっとこうしてほしいと思うことはありますか?

出澤:期待することでいうと、WOWへのこだわりというか、 「なぜ」という原点の部分。やっぱりそこのベースがないと、何をやってもダメだなと思うので。
WHYとビジョンがしっかりとした土台としてありつつも、ニーズが変わってきたときに、新しいチャレンジを考えて実現していけるような状態にしていってほしい。

言い換えると、 チャレンジする会社の宿命として、その熱量、密度、濃度を高めることをLINERにはぜひ意識してほしいと思うし、それはLINE Fukuokaに対しても同じですよね。
濃い仕事をみんなでしていきたい、と思っています。

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前・後編にわたってお届けした出澤×鈴木対談、いかがでしたか?
「番外編」では本編でお伝えしきれなかった、二人の「“今”を形作るにいたったキャリア体験」についてお届けします。お楽しみに!



LINE Fukuokaの取り組みについては、下記の公式アカウントから随時お届けいたします。是非ご登録ください。
LINE公式アカウント(LINE ID:@linefukuoka)

 

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