「聞く」より「聴く」。質問を重ねることで見えるコミュニケーションの可能性

LINEヤフーのさまざまなサービスの運用を担い、グループで最もユーザー接点が多い私たち、LINEヤフーコミュニケーションズ。「1億のユーザー満足をつくる、No.1コミュニケーションカンパニー」を目指し、日々ユーザーと向き合っています。
「コミュニケーションのかたち 」は、当社の社員たちが仕事を通じて築いてきた「人との関わり方」を紹介しながら、それぞれが大切にしているコミュニケーションについて、インタビューを通して考えていくシリーズです。
今回は採用推進部にてアシスタントリーダーとして活躍する能美に、コミュニケーションをとるうえで大切にしていることをききました。

採用推進部 採用チーム 中途採用パート
能美 一大 Kazuhiro Nomi
人材紹介会社でキャリアアドバイザーを経験したあと、2022年にLINEヤフーコミュニケーションズに入社。採用推進部で中途採用を担う。実は法学部卒で、行政書士試験を合格しており、法律家を目指していたことがあるらしい。福岡の居酒屋をとてもよく知っている。
業務紹介
― 能美さんの普段の業務について教えてください。
能美:主に中途採用 を担当しています。具体的には、求人媒体の担当者とのやりとりやオファー対応、求職者への会社説明、面接調整、最終面接後の人事面談を行っています。特に意識しているのは、部署が求める人物像(ペルソナ)と実際の求人のすり合わせです。部署が求める人材要件をきくだけでなく、採用マーケットの動向も加味して理想と現実のギャップを調整し、現実的かつ具体的な人物像を設定することを意識しています。
― 以前は人材紹介会社でキャリアアドバイザーをしていたそうですね。
能美:はい、入社前は約9年間、人材紹介会社で法人向けの採用コンサルティングや求職者へのキャリアアドバイザーとして働いていました。さまざまな業界や職種の方々と向き合ってきた経験は、現在求人を出す側になった今でも大きく活かされていると思います。
業務の中でのコミュニケーション
ー 能美さんがコミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか?
「聞く」より「聴く」こと
能美:「聞く」と「聴く」の違いは常に意識しています。この違いは、相談者に対して判断を下すか否か、だと自分では解釈をしています。
例えば、部下から「チームのコミュニケーションが最近うまくいっていないんです」と相談された上司がいたとします。
「聞く」場合、

上司A

上司B

上司C
そういうこともあるよね
のような回答になります。
自分で勝手に判断して、解決策を一方的に押し付けていますし、問題の本質や背景を理解しようとしていない。上司Cは一見理解しようとしているように見えて、自分には関係ないという判断をして相談者をシャットダウンしています。
一方で「聴く」の場合、

上司D
具体的にどんな点でコミュニケーションに課題を感じているの?
誰とのやりとりで難しさを感じているの?
のようなやりとりになります。
相談してくる段階でハッキリとしていなくても、「こっちがいいな」という気持ちはすでに持っていると思うんです。
なので、すぐに解決策を提案したり、自分の経験から判断したりするのではなく、まずは相手の気持ちや状況を丁寧に受け止めること。解決方法を一緒に考えて、相談者の主体性を尊重することで、はじめて「聴く」ことができると考えています。
質問で見える本質と広がる可能性
ー「聴く」ために、具体的にはどのようなコミュニケーションをとられているのでしょうか?
能美:相談した段階ではハッキリ見えていない意思が、輪郭がハッキリ見えてきて、相手が判断できるくらいまでにたどりつけるように、質問を重ねることです。
もちろん場面によっては自分の意見をいうことも大事です。しかし「聴く」必要があると思った時は、質問してみるように心がけています。
相談してもすぐに「こっちが正解」とはいわずに、
メリットとデメリットを整理してくれることで判断を委ねてくれると評判の能美さん。
ー 質問を重ねることは簡単なようで難しいと思うんですよね。そのコミュニケーションに行き着いたきっかけはありますか?
能美:キャリアアドバイザー時代の経験からです。多い時には月に80件ほどの転職相談に乗ることもあり、その中で転職理由や悩みは本当にさまざまでした。「もっと楽な仕事がいい」「単純に残業を減らしたい」といった理由で転職を考える方も少なくありません。それ自体は悪いことではなく、それぞれにそう考える背景があるので、決して否定するつもりはありません。
ただ、振り返ってみると、「〇〇にチャレンジしたい」というようなポジティブに思考を言語化できている方に対しての方が、自然と力が入っていた自分に気づきました。でも、前向きに仕事を捉えられる方はどちらかというと少数派です。つまり、僕に相談してくださる多くの方々に対して、大した価値を提供できていなかったかもしれない。
その反省から、相手により深く興味を持ち、言葉の裏側にある本音や背景を探り、対話を通して自ら答えを見つける手助けをしたいと考えるようになりました。「聴く」ことを意識的に実践するようになりましたね。
考えた中で一番しっくりきたのが、どんどん質問をしてみることです。求職者が何のために仕事をしたいのか、どんな仕事が働き心地がいいのかなど、質問を重ねて深掘りすることで、本当のご自分のキャリアへの思いが徐々に明らかになっていくことを実感したんです。僕自身も質問をすればするほど、求職者の方を深く知れて、最後まで熱意を持って就職を見届けられることが増えていきました。
例え相談してくれた人が最初に消極的な理由で相談をしていたとしても、その人の興味関心がどこにあるのかを質問することで、前向きで納得できる選択を後押しできるんだ、と実感したきっかけでしたね。
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― 興味を持って質問をし続けられるのもすごい能力だと思います。質問する際に気をつけていることはありますか?
能美:例えば、20代半ばの方と面談をする時と、豊富なキャリアを持つ40代の方と面談する時では、対応を変えています。キャリアの転機を模索する40代の方が単に楽しく会話したいわけではないと思うんです。おそらく「この会社の人事部はどんな人材を重視しているのか」「私のキャリアをどう評価しているのか」といった視点で、僕を含めた会社側を観察しているはず。
そこで僕が意識しているのは、目の前の人が本当に知りたいこと、ききたいことは何かを想像することです。「この面談で何を得たいと思っているのか」「どんな不安や期待を抱えているのか」「どのような言葉や態度が心に響くだろうか」。こんな問いを自分の中で巡らせながら、最適な対応を探るようにしています。
「相手の内面を想像する」過程自体に、僕は楽しさを感じている気がします。人の心の機微に触れ、それを言葉にしていく作業は、実は僕にとって充実した時間なのかもしれません。
人見知りなのに親しみやすい理由はギャップ?
― 実はこのインタビュー、断られるかもと思いながら猛オファーしたんです。いつも一歩引いて俯瞰している印象で、あんまり前に出るのは好きではないですよね?
能美:そうですね、裏方が多いです。採用推進部は前に出るタイプが多いですが、僕は逆かもしれません。基本の性格が人見知りだから、というのが一番大きい気がします。
― でも飲み会のオファーがひっきりなしだとか。確かに能美さんって壁を感じないというか話しやすい。親しみやすい雰囲気作りを意識されていたりするんですか?
能美:いえ全く。というか壁を感じないというのは違いますよ!福田さんは初対面じゃないからそう思うのかもしれないですが、初対面の僕は話しかけにくいはずです。いつもマスクしていて表情も見えないし、性格も明るくはないし、あまり話さないので。むしろ怖そうだと思われているかもしれません。もし「親しみやすい」と感じていただける理由があるとしたら、それは最初の期待値が低いからこそのギャップ効果です。
もともとの性格も人見知りなので、意図してギャップをつくっているわけではありませんが、「親しみやすい」の前に「意外と」という枕詞が付くはず。
― すごい分析力だ…!最初の印象も少しは影響しているかもしれませんが、それ以上に聴く力が人よりも高いからという点が大きいと思いますけどね。
とはいえ、まったく怖そうに見えない能美さん。
能美さんのコミュニケーションのかたちとは?
― 最後に能美さんのコミュニケーションのかたちを教えてください。
能美:僕が大事にしているのは、相手の話を「聞く」ではなく、「聴く」ことです。相手に相談されてもすぐに判断するのではなく、質問を重ねて相談者の意思を明確にすること。さまざまな視点を持ち、質問をすることで相手の可能性を共に探ること。これが僕の「コミュニケーションのかたち」です。